全国の医療機関から昨年、2015年の1年間に報告された医療事故の件数は3300件余りで、これまでで最も多くなったことが日本医療機能評価機構のまとめでわかりました。
医療事故の分析などを行っている日本医療機能評価機構によりますと、大学病院など全国の主な医療機関275施設から昨年1年間に報告された医療事故は3374件でした。これは一昨年、2014年より463件多く、2004年に調査を始めてから最も多くなりました。
報告された内容では、投与する薬や量の間違いや、体内へのガーゼの置き忘れなどが目立つほか、患者を取り違えて手術をしてしまったケースもありました。また、因果関係はわからないものの、患者が死亡したケースは一昨年よりも81件増えて306件に上りました。
このほか、医師や看護師などが重大な医療事故につながり兼ねないと感じた、いわゆる「ヒヤリーハット」の事例も、全国の586の医療機関で合わせて78万件を超え最多となりました。
報告件数が増えていることについて日本医療機能評価機構は、「医療事故を報告して、再発防止に生かさなくてはならないという意識が、医療機関の間に定着してきたのではないか。医療界全体が患者に信頼してもらえるよう、さらに報告の徹底を求めたい」と話しています。
また、見た目が似た薬を医師や薬剤師らが誤って使ったケースは、2010年1月から今年3月までに計24件あったことが、日本医療機能評価機構のまとめでわかりました。機構は「名称をきちんと確認することが必要だ」と注意を呼び掛けています。
全国約1000の医療機関を対象にした医療事故情報の収集事業で報告された事例を分析しました。患者自身が誤ったケースは除外しました。
機構のまとめによると、24件の内訳は注射薬10件、内服薬6件、外用薬5件、その他3件でした。注射薬では、薬剤を入れたガラスの容器(アンプル)の形が似ていたのが7件、内服薬では、包装の外観が似ていたのが5件と目立ちました。
取り違えが起きた場面は注射薬では9件が薬剤の準備中で、主にかかわっていたのは助産師・看護師が6件、医師が3件。内服薬では6件すべてが調剤中で、いずれも薬剤師がかかわっていました。
24件のうち23件は、患者に使われました。死亡例はなかったものの、障害が残った可能性がある事例が、3件ありました。新たな治療が必要になった事例は、11件でした。
製薬業界は、アンプルや内服薬の包装、外用薬の容器などにバーコードを表示する取り組みをしており、機構は、バーコードを薬剤の照合に使うことも医療機関に求めています。
2016年8月29日(月)
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