■新型がん免疫薬「CAR―T」の治験開始へ 武田薬品が固形がんを対象に

 武田薬品工業は4日、新型のがん免疫療法として知られる「CAR―T」の臨床試験(治験)を今年中にも開始すると発表しました。国内スタートアップ企業から全世界での開発権を獲得しました。武田がCAR―TCの治験を行うのは初めて。がん分野のパイプラインを強化し、世界大手との競合に挑みます。
 治験を開始するのは、国立がん研究センター・山口大学発スタートアップ企業のノイルイミューン・バイオテック(東京都中央区)が保有する候補品で、固形がんを対象としています。武田は2017年9月から同社と共同研究を進めており、今回の契約につながりました。
 CAR―Tは「キメラ抗原受容体T細胞」の略で、免疫を担うT細胞の遺伝子を操作して、がんを見付ける能力を高めたもの。スイス製薬大手ノバルティスファーマの「キムリア」が世界初の製品として2017年にアメリカで実用化し、1回5000万円以上の超高額な薬価が話題となりました。日本では承認申請中です。
 CAR―Tを開発する企業は世界的に増えており、製薬大手が開発を手掛けています。日本でも第一三共や小野薬品工業、タカラバイオなどが参入して、治験やスタートアップ企業との提携を進めています。
 CAR―Tは一般に、白血病やリンパ腫などの血液がんには高い効果を発揮するものの、肺がんや乳がんなどの固形がんでは効果不十分でした。ノイルイミューン・バイオテックのCAR―Tは、山口大の玉田耕治教授が開発した技術を活用し、免疫を活性化する成分を出すよう改良を加えてあり、固形がんへの攻撃力を高めています。
 同様の改良を加えたCAR―Tが世界では複数登場しており、開発競争が激化しつつあります。武田は早期に固形がんへの効果を実証し、この領域で主導的な立場を狙う考えです。

 2019年1月4日(金)

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