アメリカの医薬品大手イーライ・リリーのアルツハイマー病薬「ドナネマブ」について、アメリカ食品医薬品局(FDA)は外部の専門家による諮問委員会を10日に開き、承認推奨を全会一致で決めました。FDAはこれを踏まえて、承認を最終判断します。
承認されればエーザイとアメリカのバイオジェンの認知症薬「レカネマブ」に続く、認知症治療の選択肢となります。ドナネマブはレカネマブと同じく、病気の原因物質の一つとされるアミロイドベータに結合して除去します。イーライ・リリーはドナネマブを巡って、日本の厚生労働省にも承認を申請中です。
外部の専門家による諮問委員会は、早期アルツハイマー病の患者を対象とするドナネマブの使用について、承認を推奨するかどうか投票を実施し、委員会の参加メンバー11人が全会一致で賛成しました。10日のアメリカ株式市場で、イーライ・リリーの株価は前日比約1・8%上がりました。
イーライ・リリーの神経科学研究開発グループ副社長のマーク・ミントゥン氏は諮問委員会の投票について「全会一致の賛成票をうれしく思っている。この治療薬を患者に提供できることを楽しみにしている」と述べました。
一部参加者からは、脳の微小出血や浮腫のリスクを懸念する声が出たほか、効果について黒人やヒスパニックなどのマイノリティー(少数派)患者のデータが不足しているとの指摘が出ました。その一方で、「リスクを考慮しても患者にとってのメリットのほうが多い」との意見が優勢でした。
ドナネマブの対象は、加齢だけでは説明できない物忘れが現れた軽度認知障害(MCI)から、生活に支障が出始めた早期認知症の人。4週間に1度の頻度で点滴投与します。より症状が進行した人は対象外。
金融サービスのJPモルガン・チェースのクリス・ショット氏は認知症薬の市場はドナネマブとレカネマブが半々で分け合うと予想しています。同氏はドナネマブの売上高は2024年に約3000万ドル(約47億円)、2025年には4億5000万ドルになると予想しています。
2024年6月11日(火)
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