■WHO「偽造医薬品」の流通を警告 主力メーカーも懸念を表明

 世界保健機関(WHO)は20日、減量薬として使用が拡大するセマグルチド系医薬品について、幅広い地域で偽造医薬品の報告が増えていると警告しました。
 セマグルチドは、デンマークの製薬大手ノボノルディスクの肥満症薬「ウゴービ」と糖尿病治療薬「オゼンピック」の有効成分。本来は医療関係者の処方が必要なものの、食欲を抑える減量効果が注目され、美容目的で不正規に入手を試みる人が増えているといいます。
 WHOによると、偽造医薬品の報告は、2022年以降「すべての地理的地域」で増加してきました。2023年10月から12月にかけ、ブラジルとイギリス、アメリカで見付かった製品をWHOが調査したところ、偽造医薬品と確認されたことを受け、今回の警告に至りました。
 WHOは、偽造医薬品の使用は「合併症や予想できない健康へのリスクを引き起こす可能性がある」と指摘。医療従事者や減量薬の使用者に対し、疑わしい場合は医薬品の使用を中止し、WHOや当局に報告するように呼び掛けています。
 別の肥満症薬「ゼプバウンド」(一般名チルゼパチド)を製造・販売するアメリカのイーライ・リリーも20日、公開書簡を発表し「(同薬に)似せて宣伝、またデザインされた模造品や偽造品の急増」に対する懸念を表明しました。
 イーライ・リリーによると、偽造医薬品はオンラインやソーシャルメディアなどで宣伝や販売されています。偽造医薬品に含まれる有効成分の種類や用量が適切でなく、「深刻な(健康)被害につながる可能性がある」と指摘しています。
 イーライ・リリーとノボノルディスクは、それぞれの糖尿病治療薬と肥満症薬の有効成分を含むと主張する製品の販売差し止めを求めて、数社を提訴しています。
 また、イーライリリーは20日、同社製品の有効成分チルゼパチドを含むとする製品を販売している医療スパとウェルネスセンターなど、さらに6つの事業体を提訴すると発表しました。

 2024年6月21日(金)

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