世界保健機関(WHO)は20日、アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)を中心に感染が拡大しているウイルス感染症「エムポックス(サル痘)」について、新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)とは異なり、ウイルスやその制御手段に関して、すでに多くの知見があると述べました。
WHOのハンス・クルーゲ欧州地域事務局長はビデオ会見で、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言する切っ掛けとなった「クレード1(コンゴ盆地系統群)の亜系統、「クレード1b」についてはさらなる研究が必要なものの、エムポックスの感染拡大は抑制可能だと述べました。
同事務局長は、「エムポックスは新型コロナとは違う」「制御方法はわかっている。ヨーロッパ地域での感染拡大を完全に遮断するために必要な措置もわかっている」と語りました。
WHOは2022年7月、より軽度で主に男性間性交渉者の間で広まった「グレード2(西アフリカ系統群)」の亜系統、「クレード2b」について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
翌年5月に解除されたこの時の宣言について、クルーゲ事務局長は「ヨーロッパでは最も影響を受けた集団に直接働き掛けたことで制御できた」と述べ、強力な感染症サーベイランス、感染者との接触者追跡、影響を受けた集団における行動変容の促進、そしてワクチン接種のすべてが感染制御に寄与したと説明しました。
また同事務局長は一般の人々へのリスクは低いとし、「WHOヨーロッパ地域で、新型コロナの再来であるかのようにロックダウン(都市封鎖)が行われるかといえば、答えは明確に『ノー』だ」と述べました。
「クレード1b」は、主に成人間の性的接触を通じて感染が広がっています。
ただし、同事務局長によると、家庭や病院などで特に口腔内に水疱がある急性期の感染者から、濃厚接触した相手に飛沫感染する可能性はあります。「感染経路にはまだ若干、不明瞭な点があり、さらなる研究が必要だ」といいます。
また、WHOのタリク・ヤシャレビチ報道官は、「WHOはマスクの着用は推奨していない」と述べました。
現段階では大規模なワクチン接種も推奨しておらず、「最もハイリスクのグループに対し、発生状況に応じてワクチンを使用するよう推奨している」といいます。
2024年8月21日(水)
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