■慶応大学病院、子宮移植の実施計画を承認 出産目的の女性対象、国内初

 慶応大学病院は27日、病気のために子宮を持たない女性に第三者の子宮を移植して妊娠・出産につなげる「子宮移植」の臨床研究について、同大学の審査委員会が実施計画を承認したと発表しました。同病院は今後、国内初となる子宮移植の実施を判断します。
 生まれ付き子宮がない「ロキタンスキー症候群」という病気の女性など、20〜30歳代の3人程度を対象に実施します。この病気は4000〜5000人に1人の割合で起きるとされます。同病院は2022年に学内の委員会へ実施計画を申請し、審査が続いていました。
 子宮移植を望む人は卵子を採って体外受精し、凍結保存します。その上で第三者の子宮を移植します。提供者となる第三者は母や姉妹などの親族を想定します。移植後は免疫抑制剤を服用しながら経過を観察し、移植した子宮が拒絶されず機能することを確認します。その後、受精卵を子宮に入れて妊娠につなげます。帝王切開で出産し、その後子供を望まなければ子宮を摘出します。
 研究責任医師を務める慶応大の木須伊織専任講師は、「子宮がないが子供を持ちたいと強く願う人にとって、子宮移植は選択肢が広がる希望の光だ。実施を見据えて前向きに準備を進めたい」と話しました。今後、同病院は移植を安全に実施するための体制を整えた上で実施するか判断します。
 病気などで子宮を失った女性も、出産の機会を得られるようになる可能性があります。一方、健康な提供者の体にメスを入れることには倫理的な課題を指摘する声もあります。病気で命を落とす可能性がある患者を救うための一般的な臓器移植とは異なります。
 日本医学会は2021年に子宮移植に関する報告書をまとめており、移植を受ける女性や子宮を提供する女性などへのリスクが十分明らかでなく倫理的な課題が残るとしました。その上で移植を少数に限って容認するとしました。
 子宮移植は海外が先行します。2014年にはスウェーデンで世界初の子宮移植による赤ちゃんが誕生しました。スウェーデンのイエーテボリ大学の研究チームは2024年12月までに世界で140件以上の子宮移植が実施され、70人以上の赤ちゃんが誕生したと推定しています。

 2025年2月28日(金)

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