■ダウン症の原因となる染色体除去に成功 ゲノム編集で、三重大研究チーム

 染色体の本数異常が原因で起こるダウン症の人の細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り、ゲノム編集技術で過剰な染色体を取り除くことに三重大などの研究チームが成功し、21日までにアメリカの科学誌「PNASネクサス」に発表しました。将来的な治療応用に向けた基盤技術として期待されます。
 ダウン症は、計23対の染色体のうち、21番目の染色体が通常の2本ではなく、3本あることが原因で発症します。知的発達の遅れや心疾患などの症状がみられますが、過剰な染色体を取り除く方法はありませんでした。
 三重大の橋詰令太郎講師らの研究チームは、ダウン症の人の皮膚からiPS細胞を作製し、21番染色体の構造を解析。ゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」を使い、3本ある染色体のうち特定の1本を狙って切断する手法を編み出しました。
 その結果、最大37・5%の細胞から過剰な染色体を除去することに成功。除去された細胞は、遺伝子の働きや細胞増殖速度などが正常な細胞と同じになっていました。
 ただ、染色体を切断できず、変異が入った細胞が残る危険性があることなどから、橋詰講師は「そのまま臨床応用できる技術ではない」と強調。「ダウン症の原因はかなり前からわかっていたが、余分な染色体を取り除く方向の研究がなかった。この研究が呼び水となればいい」と話し、より安全な方法で過剰な染色体を取り除く手法の研究を進めるといいます。
 現在はダウン症のある人の平均寿命は60歳を超え、加齢で変化する病態や合併症への対応が必要とされています。

 2025年3月16日(日)

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