■感染症リスクもある体外式の補助人工心臓で3年間待った10歳代男児、心臓移植に成功

 筑波大付属病院(茨城県つくば市)は19日、同病院で約3年にわたり体外式補助人工心臓(体外式VAD<バド> )を装着し、心臓移植を待っていた10歳代の男児が昨年、移植に成功したと発表しました。体外式VADには合併症を起こすリスクがあり、これを装着した子供が無事に移植に至ったのは県内初といいます。
 同病院によると、男児は、本来なら2つある心室が生まれ付き1つしかない「単心室症候群」という心臓病を患っており、心臓移植のほかに治療法がない重症心不全となって同病院に救急搬送され、体外式VADを装着してドナーが見付かるのを待っていました。昨年、ドナーが見付かって東大医学部付属病院で心臓移植手術を受け、現在は自宅で過ごせるまでに回復しているといいます。
 補助人工心臓は、機能が落ちた心臓の血液の送り出しをポンプで助けます。大人はポンプを体内に埋め込めるものの、体の小さな子供は埋め込むことができず、体外にポンプを設置します。胸部に穴を開けてポンプにつながる管を体内に通すため、傷口から細菌が入って感染症になるリスクがあります。
 さらに1台約4000万円と高額で、17日現在、国内で利用できているのは12施設の22人のみ。装置が少なく、希望しても着けられなかったり、着けても合併症で亡くなったりする例もあります。
 これまで移植医療の実績を積み重ねてきた筑波大付属病院では今回、医師や看護師、臨床工学技士や理学療法士ら他職種のスタッフが連携し、男児を24時間体制で見守ってきました。保護者は「医療チームの皆さんが、息子が前向きに過ごせるようにと心掛けてくれたことは心の支えだった。安定して過ごせていることに感謝の気持ちでいっぱい」とコメントしました。
 同病院の平松祐司院長は東京都内で19日に開いた記者会見で、「移植医療は高度な技術が必要で不安も伴うが、国や自治体からのサポートは少ないと感じる。今回のことが、(社会全体が)移植医療を考える切っ掛けになってほしい」と述べました。

 2025年3月20日(木)

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