■豊胸手術で特許侵害、美容クリニックに賠償命じる 知的財産高等裁判所

 美容クリニックの豊胸手術が薬剤に関する特許の侵害かどうかが争われた裁判で、知的財産高等裁判所は特許の侵害に当たるとする判決を言い渡しました。専門家によると、医療行為による特許侵害を認める判決は初めてです。
 都内の医療機器販売会社は、都内の美容クリニックの豊胸手術で患者の血しょうと細胞を増やす薬などを含んだ薬剤が使われ、特許を侵害されたと訴え、1審では退けられました。
2審の知財高裁では5人の裁判官の大合議で審理され、19日の判決で本多知成裁判長は、「医療技術の発展には製薬産業などの研究開発の寄与が大きく、特許の保護を認める必要がある」と指摘し、会社が発明した豊胸用の薬剤を特許と認めました。
 その上で、「医師が治療などのため薬の調剤を行う場合、特許の効力はおよばないが、今回は豊胸が目的で、社会通念に照らしても治療と認めることはできない」として特許侵害に当たると判断し、クリニック側におよそ1500万円の賠償を命じました。
 専門家によりますと、医療行為による特許侵害を認める判決は初めてです。
 特許法に詳しい藤川義人弁護士は、「医師の調剤などの行為には特許がおよばないという特許法の免責規定があるが、美容が目的の場合は適用されないと判断されたのは大きい。美容医療の業界に一定の影響があるだろう」としています。
 藤川弁護士は、「今後、上告される可能性もある」とした上で、今回の影響について「製薬業界にとっては特許法の保護の対象になると確認され、一層安心して研究、開発ができることになる。一方、美容関連の医療機関は免責規定を理由に『特許の効力がおよばない』と主張するのはほぼ封じられたことになる」と話していました。
 また、「生命の維持や回復を目的とする医療と、美容目的の医療との境界をどう分けるのかについてはあいまいな部分が残っている。同様の問題が美容以外の分野で起きた時にどう判断されるのかも課題だ」と指摘しました。

 2025年3月20日(木)

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